和紙地と白釉
銀という素材に和紙と陶器というそれぞれのエッセンスを頂戴し生まれた、和紙地(わしじ)と白釉(はくゆ)。唐草、鎚目と共にichiの顔となりましたそれぞれについてお話したいと思います。
まずは和紙地について。
薄く、柔らかく、温もりが感じられる和紙。金属質の銀とは正反対の素材と言えるでしょう。柔らかくしなやかで優しい表情もありながら、ごわごわっとした感触で存在感をしっかりと感じます。繊維が多く厚みを持つところ、繊維が少なく透け感のあるところ、重なりによる色味の変化、その所々によって表情が変わります。
銀を和紙に見立て、曲げたり、折ったり、巻いたり、破いたり、と手を加えると、銀は今までにない表情となりました。
制作の際に注意する事は、目指す厚みまで徹底的に叩き込む事。厚みを変化させ不均一にし、そこから繊維の流れ一本一本を大切に、銀の表面へと写し込む。そうする事で和紙ならではの自然で細やかな表情を再現しています。和紙を模しながら和紙以上の作品に仕立てられるか、職人の腕の見せ所です。
更には銀特融の硫化が進むことで陰影が生まれ、くっきりと繊維が浮かび上がってくるのも楽しみの一つ。劣化ととらわれがちな経年変化をも楽しみに変えるichiならではの発想がここにも潜んでいます。
続きまして白釉。
手びねりの陶器の様に暖かく無骨なフォルムをもち、釉薬を塗ったかの様なガラス質の艶やかさと、素焼きの土そのもののざらつきを共存させ、そのアイテムひとつひとつに豊かな表情を加えています。
指触りなめらかで、しっとり手になじむもの。。。
デザインにはそんな意図が込められています。その微妙な感じを生み出す為、丸い素材を叩いて叩いて形にし、自然な揺らぎや丸み、凹凸を造り、温かな雰囲気を醸し出します。
職人自身の肌で気持ち良いと感じるその感覚を求めて、時間を惜しまずひとつひとつ造り上げる白釉。直線の無いフォルム。見る角度によって変化する表情。しなやかで滑らかな反射が生まれます。
重量感があり、経年変化にも豊かさを感じさせてくれる彼ら。実は陶器も、窯焼きの際に生まれる釉薬層の小さな割れ目へ水分が浸透することにより、経年変化しています。陶器のそれの様に、シンプルなフォルムの中に身に付けた人の歴史を写し取り味わいを増していく様をきっと感じて頂けるはずです 。
和紙と陶器。
日本という風土が生み出した温かな素材。
その素材から伝わる古の人々の想い。
脈々と受け継がれてきたからこそあるこの素材との出会いに感謝し、今日ももの造りが出来る喜びを少しでもお伝えすることができればと思います。
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